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法律コラム

2023年03月

ちゃんと役目を果たすこと

先日、妻が「Sさんの夢を見た」「どれだけ心の支えにしていたんだか」といったような話をしていました。
Sさんは、数年前に亡くなってしまわれましたが、その直前まで20数年もの長い間、某FM局でDJをされていた方で、その傍ら大学で英語の教員もされていました。バリトンボイスのすてきな声をお持ちの方で、亡くなられたとき、まだ60代前半でした。
Sさんは結構ご自分の考えをおっしゃる方で、社会や人生に対する思いを、時事ネタを絡めながらよくお話しされていました。正直、いささか教科書的過ぎるのではと感じる部分もなくはありませんでしたが、同感だと思うことも多く、とても良識的で信頼の置けそうな方のように感じていました。英語のコーナーが名物で、語学というものの奥深さの一端を味わうことができることから、私は毎日それを楽しみに聴いていました。また、ジャズがお好きで、よく古いスタンダードナンバーをかけておられたことも、私にとっては嬉しいことのひとつでした。
長らく朝の番組をやっておられた関係で、私はSさんのことを随分前から知っていました。特に車通勤をするようになってからは毎日のように番組を耳にしていたので、見ず知らずの他人なのに、Sさんのことを、まるで親戚か何かのように感じていました。Sさんが朝の番組をしていてくださることで、私は「ああ、ここにちゃんとした人がいる」「こういう人がいてくれて、社会はきちんと回っているんだ」という安心感を得ることができました。
それなのに、ある日突然体調不良とのことでお休みに入ってしまわれ、程なくしてお亡くなりになったというアナウンスがありました。余りに唐突だったので気持ちの整理がつかず混乱し、とても大きなショックを受けました。
Sさんの死は私にいくつかの教訓らしきものを遺していきました。
そのひとつは、人は与えられた守備位置にきちんと就き、そこでできるだけ前向きに努めを果たすべきだということでした。できるだけ言い訳せずに黙々と。
もうひとつは、当たり前のことではあるのですが、自分に対しても他人に対してもできるだけ誠実に努めるべきだということでした。多様な意見がありうる事柄について発言する際には、それが個人的な意見であると断ったうえで、決して物事を決めつけたり、自分の意見を押しつけたりしないこと。
そして何より、自分が辛くても、それを要らぬ人にまで伝えて無用に心配させたりしないこと。その強さを身につけること。
Sさんの生き方は、私にとって、ひとつのモデルケースとなり手本となりました。私は、自分が何かつらいときに、ふとSさんのことを思い出します。そして自分を鼓舞します。
Sさんが亡くなられた年、その年にあった最も悲しかったことのひとつとして、妻はSさんの死を挙げました。全くもって同感でした。似たもの夫婦ですね。