法律コラム
柄にもない話ですが。
ジャズの古いスタンダード・ナンバーにIt`s Only A Paper Moonという有名な曲があります。私は、Miles Davisのキャリア初期のアルバムDigでその曲を知りました。そこでのMilesの演奏は、とても親密でスイートです。ボーカル入りであれば、Nat King Coleの弾き語りがお勧めです。とても素敵な曲であり、演奏です。
歌詞は、端的に言うなら「作り物であっても、あなたが私を信じてくれるなら、それは作り物でなくなる(本物になる)」というものです。人が人を愛することの力(奇跡)を歌った典型的なラブ・ソングになっています。
村上春樹は、その歌詞を一部引用する形で、「1Q84」という長編小説を書いています。これも、とても力強い内容を持つラブ・ストーリーになっています。そこでは抗いようのない境遇にある不幸な少女が、ただ一人自分を助けてくれた男の子のことを、ずっと強く思い続ける様子が、とても綿密に描かれます。少女は、ただ一度だけ男の子と二人きりになるチャンスに恵まれ、男の子に駆け寄って、強くその手を握り、じっとその目を見つめます。その時点での自分を全て差し出し、その思いを伝えようとします。その悲壮なまでの決意には言葉を失わせるものがあります。その後別々の道を歩みつつも、少女はその男の子のことを、終生強く愛し続けます。その力が様々な困難を克服する原動力となって、物語は複雑な様相を呈しつつ進んでいきます。この本を読むと、人が人を強く求めるということの素晴らしさにもう一度気づかされます。それが時に強い憎しみを生むものに変わることがあったとしてもです。
優れた物語を読むと、自分のつまらない考え方に気づかされます。同時に偏狭で歪んだ考え方に捕まってしまわないようにというメッセージも受け取ります。
But It Wouldn`t Be Make-Believe (でも、それは作り物ではなくなる)
If You Believe In Me (あなたが私を信じてくれるなら)