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法律コラム

2023年10月

本を読むこと。

旅行帰りの飛行機で時間を潰すため、スマホのアプリで夏目漱石の「門」を再読したことがきっかけで、ここのところ珍しく読書に励んでいます。「それから」「彼岸過ぎまで」と読み続け、先日「行人」を読了しました。以前、「三四郎」と「こころ」は何度か読んでいるので、これで前期三部作と後期三部作を読破したことになります。現在は未読の短編を読み進めています。
私は、若い頃からあまり読書をするタイプではなく、小学校のころは「ルパン」や「ホームズ」のジュブナイルくらいで、中学に入ってようやく司馬遼太郎を読むようになったくらいでした。高校のころも、現代国語で面白いと思った中島敦(「山月記」)や夏目漱石(「こころ」)、海外のミステリー(クリスティ、クイーン)を読む程度で、そんなにまとめて本を読むことはありませんでした。大学に入ってから村上春樹を読むようになり、色々な面で影響を受けましたが、司法試験の受験時代は、難しい専門書ばかり読んでいた反動で、主に国産のミステリー(いわゆる「新本格」もの)を楽しむ程度でした。そして、仕事をするようになってからは、なかなか書物に手が延びなくなりました。ですので、とても読書家とは言えません。
妻は、幼いころからかなりの読書好きで、夏休みには「新潮文庫の100冊」を読破しようと目論むようなタイプだったらしく、今でも「根気が続かない」「文字が小さくて読みづらい」と言いながら熱心に本を読んでいます。
息子も、妻の影響か大変な読書好きで、小遣いのかなりの部分を書籍の購入に費やしているようです。鞄に何冊も重い本を持って外に出ています。そのため無意味に博識で、大概どんな話をしても、「ちなみにさ…」と何か関連したことを話し始めます。五月蠅いくらいです。
おかげで休日には家族で図書館ばかり行っていますが、私は雑誌コーナーで、雑誌をパラパラやりながら、大量の本を抱えて戻ってくる2人を待っています。そんな2人の様子を見ていると、何か少し羨ましいような気がしてきます。
そんなに本を読んできたわけではないですし、家族の中では最も本に縁遠い生活をしていますが、それでも読書自体は若いころからとても好きです。本を読むことは、音楽を聴いたり、絵を見たりするのと同じで、とても個人的な営みで、親密な喜びに溢れています。それは生きていくうえでの糧となり、心フラットな状態に保ってくれます。物事の前向きな面に気づかせ、極端で独善的な考えから自分たちを護ってくれるように感じます。また、読書することで自分の変化にも気づかされます。同じ本(例えば「こころ」)でも感情移入する対象が変わってきて、若い頃は「私」の方でしたが、今では「先生」の方により強く惹かれます。年をとったということでしょうか。でも、それも悪くない気がしています。
ただ、最近の大手古書店は同じタイトルのものばかり揃っていて何だかいまひとつですね。いくら最高傑作とはいっても、漱石の棚に「こころ」ばっかりというのも何だか興ざめです。それが素晴らしい作品であることに異論を挟むつもりは毛頭ないのですが。